伝わらなかったあの日の想い
 両親が事故に遭ってから、みんながそう言ってくれる。
けれど、私は、心の中で反発をする。

私は、お父さんとお母さんの子。
伯父さんの子じゃない。
例え2人がいなくなっても、それは変わらない。

みんなが親切心で言ってくれてるのは分かる。
それでも、私から両親を奪わないでほしい。

我ながら捻くれた性格だと思う。
でも、どうしようもない。
自分でも、この感情とどう向き合えばいいのか、分からないんだから。

それでも、私は、辛うじて笑みを浮かべてお礼を言う。

「ありがとうございます。
また、連絡します。」

私が頭を下げると、伯父さんは満足したように車を発車させた。

 それを見送って、私が家に入ろうとすると、黒のSUVが来て、当然のようにうちの駐車場に止めた。

誰?

と思ったのも一瞬。

ドアが開き、降りてきた瞬間に分かった。

賢吾(けんご)…… 」

葉山(はやま)賢吾は、幼馴染。
うちからニ本 南の通りに実家があり、保育園から高校まで同じ学校に通った。

「紗優美、久しぶり。」

賢吾は、気遣うような優しい笑みを浮かべて言った。

「久しぶり。
昨日も今日も来てくれてありがとう。」

賢吾は、昨日の通夜も今日の葬儀式も来てくれていた。

「気づいてたんだ?」

「当たり前でしょ。
何年、一緒だったと思ってるの?
賢吾だけは一目で気付くわよ。」

そう、賢吾は子供の頃からの腐れ縁。
保育園の頃から小学校低学年の頃まで、毎日のように一緒に遊び、その後も家族ぐるみで一緒にバーベキューをしたり、お誕生日会などのホームパーティをしたりして、まるで本物の兄弟のように過ごした。
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