大好きな旦那様と離婚に向けて頑張ってます?!【完】
「女の気持ちって俺には分かんねえからなあ。だってさあ、俺は美咲が悠真に迫るなんて思ってもみなかった」

「……その事なんだけど」

「ああ、記憶飛ばしたってやつ?」


 アホか、といったように半眼になった涼は私を見下ろした。本当に失敗してしまった。ちゃんと覚えてれば、あの時不安になっていなければ、当日に解決出来たのに。


「ちゃんと言えばよくねえ?何をそんな拗らせてんの?」

「急に悠真が甘くなっちゃって……、夢みたいで、それが無くなるって思うと辛かったの。……今思うと間違ってた。逃げだったと思うわ」


 最初は悠真を政略結婚から解放しようとしていた。それが正しいとずっと思っていた。
 涼はしばし悩んだ末に「いいんじゃねえの?」とあっさり言った。


「恋愛に後悔をする事は沢山あっても、間違いはないだろ。まず正解がねえんだし」


 口元に手を当てて考え込む仕草をしたまま、涼は高い位置から私を見下ろした。


「そうだよなあ……、美咲にとっては初恋になるんだよなあ」

「そうだけど……」


 ニヤリと涙ボクロのある目元が悪戯っぽく細められる。またからかわれるんじゃないかと、私は内心身構えた。
< 113 / 154 >

この作品をシェア

pagetop