大好きな旦那様と離婚に向けて頑張ってます?!【完】
 どうしよう。涼についての性格的には凄くわかるのだけど、私が涼に流されちゃいそうってどういう事なんだろう。


「聞いてる?」


 抱き締める力がほんの少し緩み、頬に手を当てて上を向かされた。ダークブラウンの切れ長の瞳がほんの少し憂いを帯びたような色を宿している。そしてその色の中に、真っ直ぐ私を射抜くような荒々しい熱があった。見たことがある。

 それは、私を抱く時に見せる熱。


「き、聞いてる……。涼と会っちゃ駄目っていつ言ってた……?」


 スルスルと頬を撫でられて、背筋がむず痒くなるのを堪えながら聞き返した。至近距離にある悠真の声が、吐息が、心臓に悪い。自然と体温が上がる。


「……俺達が最初に結ばれた日の夜だよ」


 悠真の言葉を私の頭が理解した瞬間、一気に身体の熱が引いた。何かとんでもない事を知らない所でやってしまった気がする。


「そ、それは……」


 慌てて弁解しようとするけれど、悠真はあっさりと私から身体を離した。そして真剣な表情で告げた。


「続きはリビングでしよう。美咲に触れていたら我慢が出来なくなりそうだ」

「が、我慢って……」


 口調とは裏腹に、私のこめかみに羽のように柔らかいキスを落とし、悠真は自身のビジネスバッグと私のハンドバッグを持って廊下を進んで行く。私も追い付こうと慌ててパンプスを脱いだ。
< 126 / 154 >

この作品をシェア

pagetop