大好きな旦那様と離婚に向けて頑張ってます?!【完】
 リビングに入ると悠真は既にスーツの上着を脱いで、乱雑にソファーに置いていた。ネクタイもやや緩める。


「座って」


 ダイニングテーブルを顎で指した悠真の指示に従って、大人しく席につく。彼も続いた。ダイニングテーブルの木目を見つめて、何を言われるのだろうと戦々恐々としていた中、悠真は重々しく口を開いた。


「涼は忙しい」


 なんか、予想とは違った言葉が出てきて虚をつかれる。顔を上げると悠真と目が合った。真っ直ぐ私を見つめる彼の瞳から、目が逸らせなくなる。


「俺と由弦とスケジュールが合わないのもあるけど、医学部五年生になってから殊更に忙しいって聞いている。実際、涼は疲れた顔をしてたでしょ?」


 そういえば、涼は慢性的な寝不足だの言っていたことがある。医学部生は大変だと言っていたけれど、あんまりにも涼が快く相談に乗ってくれるから忘れてしまっていた。

 私、どれだけ余裕がなかったんだろう……。


「なのに涼は美咲とは頻繁に会っていた。だから俺は涼と美咲を二人きりにしたくなかったんだ。……涼の気持ちが分からなかったからね」


 先程よりも幾分か冷静になったらしい悠真は、状況を説明していく。そっか……。確かに私も悠真が女の人と会ってたら嫌だったかもしれない。悠真が仕事仲間と言っていても、相手の人が悠真に対してどう思っているかなんて分からないし。
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