エリート弁護士は独占愛を刻み込む
それができたらどんなにいいだろう。
まだ……本当のことを話す勇気が出ない。
ううん、ずっと内緒にしておきたいのだ。
「……言えません。言って弟にも両親にも心配かけたくない」
ギュッと唇を噛むと、恭吾さんは少し溜め息交じりの声で言った。
「前の会社辞めて寮出たことは弟くんにはバレてるんだ。法律事務所に転職したって電話で言っただけで弟くんが信じると思う?」
確かに弟はなにかと鋭いし、簡単には信じないかも。
「会って話した方が安心するんじゃないかな?ホテル泊まらずにわざわざ電話してきたのは、葵が元気にしてるか気になったからじゃない?」
「そうかもしれませんが……」
躊躇う私に恭吾さんは私が最も避けたい不安を口にする。
「会わずに弟くんを返したら、次は葵のご両親がくると思うけど」
そんなことになったら、実家に戻らなきゃならなくなるよ。
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