エリート弁護士は独占愛を刻み込む
あ〜、そうだった。時間がない!
壁時計を見れば、もう八時半過ぎ。
コーヒーとサラダを用意してテーブルに置くと、自分も席に座り、いただきますをして無言で食べる。
「葵、よく噛まないと消化に悪いよ」
母のように恭吾さんが言うがスルーした。
彼に構っている余裕はない。
恭吾さんとの同居がバレたくないのもあるけど、秘書として朝オフィスを掃除するため、彼より十分早くマンションを出る。
五分で食べ終わると、シンクに皿を置く。
そして、自分の寝室でニットのグレーのロングワンピを着て、コートを羽織り、「行ってきます〜!」と慌ただしく出勤した。
もう事務所までダッシュだ。
昨日デパ地下を歩き回って足は筋肉痛のはずなのに、違和感なく走れる。というか、足が軽い。
なんでだろう……と考えているうちに、事務所の前で涼太さんに会った。
「おはようございます!」
慌てている私の勢いに気圧されるように、彼は少し驚いた顔で「お、おう」と返す。
そんな涼太さんに構わず事務所に入れば、代表のひとり娘の萌音ちゃんがいた。
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