エリート弁護士は独占愛を刻み込む
私に顔を近づけて声を潜めると、彼は私の手に口紅を握らせる。
この人は〜!
じっとりと恭吾さんを見るが、彼は気にする様子もなく、自分のデスクの引き出しからファイルを取り出して、正一さんに目を向ける。
「『月島工業』さんが見える前に打ち合わせしておきましょう」
もうその顔は敏腕弁護士の顔。
二十億円もの賠償額を今日法廷で争うっていうのに、気負いはなく、自然体。
胸に付けてる弁護士バッジが輝いて見える。
きっと今日の裁判、勝つんだろうな。
詳しいことはわからないけれど、彼の表情からは絶対の自信が窺える。
前に正一さんから聞いたけど、恭吾さんは法廷では負け知らずらしい。
「葵、ミィーティングルームにコーヒーふたつ頼むよ。あと……」
「チョコもつけるんですよね?」
恭吾さんの言葉を遮って言えば、彼は私の目を見て楽しげに微笑んだ。
「うん。葵も俺のことわかってきたね」

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