完璧美女の欠けてるパーツ

「梨乃さーん」
ゆっちゃんの方が梨乃を見て悲壮感溢れてる。
上手い……この表情だ。今度参考にしよう。

「大丈夫?場所変えようか?」
「ううん。大丈夫だよ。ごめんね」
ごめんなさい。本当にごめんなさい。
一生に一度のウソを許して下さい。
今度ふたりにランチおごります!

「何かあったの?」
そう聞かれたので、ここで勝負と思い「彼と別れたの」と、ふたりに言った。ふたりは顔を見合わせて驚いていた。

「ごめんね。今は何も話せない、仕事に支障はないから大丈夫」
そう、今は何も話せないの。
大志さんと細かい打ち合わせをしてないし、嘘が苦手だから別れた設定を考えてなかったから。

「誰にも言わないでね。ちょっと総務に用事があって行ってきます」
こっそりそう言い、梨乃は席を立った。
背中で感じる後輩と同僚の気の毒にオーラが心地よい。
やったよ大志さん!でも誰にも話さないでって言ったけど……いいんだよね。

ふたりともいい人達だから、本当に誰にも言わないかもしれないよ。そしたらミッション失敗だよね。悩みながらとりあえず廊下を歩く梨乃だったけど、その心配は無用だった。


梨乃がフリーになった噂は、2日後しっかりオフィスビルに広まった。




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