甘味好き御曹司とお見合い結婚!?
その様子は、キリッとした日本人らしい美人の雰囲気を柔らかくしている。
しかし、それより目を引いたのはそんな嬉しそうな彼女を優しく見守り、嬉しそうに佇むパティシエの女の子の方だった。

控えめな雰囲気の彼女の大きめの瞳は愛らしく、唇は小ぶりでも柔らかそうだし、ストレートの髪は柔らかそうな焦げ茶色をしている。

「本当に和美は甘いものが好きね。ゆっくり食べてね」

そう告げてパティシエの彼女はまだ仕事があるのだろう、キッチンへと戻って行った。

そんな一コマから、俺にとって彼女は気になる特別な子へと変わって行き、お店に行くたびにキッチンから少しでも見えないかと様子をうかがう日々が始まったのだ。

「師範のお家が○×駅なんだけれど、その近くのお店なのよ。確か、お店の名前はボナ・ペティだわ!」


パチンと両手を合わせつつ言った母の言葉に俺は自分に都合のいい言葉が聞こえた気がしつつも確認した。

「○×駅近くのイタリアンレストラン、ボナ・ペティで間違いない?」

そう聞いた時の俺は既にもう、この話を受けることを決めていた。

「えぇ、そうよ。そういえばこの辺りは雅也家族の家から近いわね! 貴方も行ったことあるのかしら?」

ちらっとうかがう様に聞く母に俺は笑顔で答えた。

「えぇ、そこの料理は絶品ですし彼女の作るスイーツも美味しいですよ。お母さん、その話お受けしますと先方にお伝え下さい」

そうして、俺はお店で彼女を気にかけ始めて半年経ってやっと本人と話す機会に恵まれたのだった。

そんな経緯もありつつ、やっと話した彼女は今まで出会った女性たちとは違い、高峰の名前にはしり込みしてしまうし、会社の社長と告げれば合わないのではと言い出してしまう程に控えめな子だった。

話す度、メッセージをやり取りする度、会う度に俺は彼女への気持ちを高ぶらせ、ストレートに伝え続けてプロポーズを受けてもらえたのだった。
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