甘味好き御曹司とお見合い結婚!?
プロポーズから一週間後の週末には両家顔合わせを済ませて、半年後に仮押さえしていた式場を本契約する事も両家に認めてもらい、忙しい中で結婚の準備も進めている。
そんなところに、彼女の祖母そのえさんから連絡が入った。
「そのえさん、お久しぶりです。今日はなにかありましたか?」
電話に出て声をかけるとそのえさんは、穏やかだが少しばかりの配慮を含む感じで告げてきた。
「潤也さん、実は折り入って式についてお願いがあるんです。どこかでお時間取れないかしら?」
その言葉に俺はすぐに返事を返す。
「今日の夕方で良ければ伺います」
「助かるわ、よろしくお願いします」
顔合わせから二週間後、俺は再びそのえさんと会うことになった。
夕方お邪魔すると、そのえさんは夏乃のスペースの方から顔を出して手招きする。
お邪魔したリビングには見知らぬ中年の女性がそのえさんと一緒にいた。
「ごめんなさいね、今回はこちらの彩美さんにもお願いする必要があってお呼びしたのよ」
そう言うとそのえさんはお茶を運んできてダイニングテーブルで三人顔を合わせた。
「初めまして、鈴原彩美と言います。アヤミウェディングドレスサロンの代表でパタンナーです。そして、夏乃ちゃんのお母さんの春香とは学生時代からの友人だったの」
その自己紹介と名刺で、今日の話し合いの内容を理解した。
「夏乃ちゃんのウェディングドレスについてですか?」
そう問いかければそのえさんは頷いてひとつのノートを広げて見せてくれた。
「これは私の娘で夏乃の母、春香が使っていたデザイン帳なんだけれど、夏乃にこのドレスを着せてあげたくて……」
そのノートには20代前半だったならと20代後半だったなら、30代になっていたらと三パターンのウェディングドレスのデザインが描かれていた。
そのどれもが夏乃に似合うデザインで、彼女の母の娘への気持ちを感じられた。