浮気男のシンデレラ

記憶障害の全貌、

二人は高級ホテルの階段を降りて
来る。
濃ゆいワインカラーのドレスに
髪に飾ったハイビスカス
黒の高いハイヒールが覗き見える。

慶一道のタキシード姿も
モデル以上に決まっている。

野次馬も沢山集まりだした。
陽和も、野次馬に混ざり見学。
慶一道がジオンを抱き挙げたとき

頭の中がフラッシュバックした。
あ、イタタタタ
ジオンの笑顔が陽和の閉ざされた
柔らかいリボンを切った。

風船の中の水が溢れるように
閉ざされた記憶が甦って来た。

パーアニーHOTELで、ジオンを抱き
あげキスをしたシーンが
突然目の前で今おきた出来事の
ように、甦る。


そう、ゆっくりとニヤつき
慶一道は逐一陽和を見つめジオンに
深いキスをしていた。

陽和も胸に詰まる寂しさを抱きなが
ら耐えるしか無かった。

慶一道の睨むような微笑み
ジオンの瞼が閉じた時、又繰り返す
慶一道からの積極的なキス。


まるでスローモーションのように、
重なる2つの唇。

あのキスが陽和の心を食いちぎった。
悪魔のストロベリーキス

目を閉じては開け、陽和を見る
又、目を閉じては陽和を見るを
繰り返す。

悪魔のような慶一道の微笑み‼
あの突き刺すような攻撃の目は
ズキンとピンクのハートを炭になる
迄焼き尽くした。

赤いジオンの唇が慶一道のキスで
濡れていた。


毎日のように好きだ、好きだ
言ってくれてたはずなのに
陽和とはキスさえも、無かった。

なのに何回も会っていない、ジオン
とは、熱列なキスや、抱擁
そして甘い一夜

好きの深さが違うんだろう。
陽和の心はズタボロに壊れて
しまった。

誕生日を祝って貰えると
ウキウキしながらノコノコ出掛けた
呑気な猫ちゃんは、
仕掛けられた罠に自分から飛び
込んだ。


そう、その時陽和は耐えられず
会場を出た。

一時、感情も無くなり何をしていた
のか、ここは記憶が無い。
だいぶ、ロビーに座っていたのかも
しれない。

白い雪が一枚硝子の外に見えた時
ふとDVDで見た韓国映画を、
思い出した。

あの映画の真似をしたら、苦しく
なくなるの?

初雪に願いをかける。

神様はいる。
私は何も悪く無い、だから神様は
お願いを聞いて下さるはず

ボランティアにも行くし
道で困った人がいたらお手伝いをしている。

不自由な人がいたら進んで
声をかけている。

目の悪い方に横断歩道を一緒に
渡って欲しいと言われたら
喜んで渡った。

そしてもっと頑張ります
だから、だから
御褒美として、私の願いを
聞いてくれませんか?

そう呟いた時粉雪がフワフワとした
牡丹雪に変わった。

ガラス一面から見る日本庭園は
雄大な広さで白く降る雪が
迫力を増して壮大さを外国人の記憶
に植え付けるだろう。

白い雪なら、思い出したくない記憶を真っ白におおってくれる、
跡形も無く消してくれる。

緑の苔さえも、薄く消えて行く
ように・・・。

泣かないで陽和
もうすぐ忘れてしまうから。

頬をツーっと伝う涙を手で拭き
ながら、自分は慶一道の事が
本当に好きだったんだと、気づか
された。

忘れたい!

初雪に願いをかけた。

慶一道の顔を、姿を、何もかもを
忘れたい。

慶一道を記憶から消して
思い出したく無い、何もかも
全てを、嬉しかった告白も、
彼の優しい囁きも
何もかも、もういらない。

消えて
消えて
消えて

忘れたい
忘れたい
忘れたい。

自分に暗示をかけるように
何回も呟いた。

そして願い通り忘れた。
なのに・・・


思い出した時あんなに繋がら
なかった、慶一道の顔がピタリと
重なった。

あの時の慶一道の意地悪めいた顔
陽和を見て薄ら笑いをした顔、

思い出した。
気持ち悪くなる程に、

慶一道が必死になって謝ったのも
陽和の心が、壊れる様な意地悪をした事だと納得した。

記憶はある。
ただ、慶一道の事、顔、
以外は忘れていないと思っていた。
然しズッポリと抜け落ちていたのは
執拗な裏切り行為。

「あんな馬鹿、いらんくない!」

急に甦る記憶に戸惑いながらも
怒りも新たに起きて来た。



1日武蔵野先生と病院を歩き回り
かなり疲れ果てた。

先生は奥様と落ち合うため空港へと
向かった。

一人ホテルに帰りつき、
部屋にもどる前
コーヒでも飲もうかと思い
ホテルのラウンジに寄った。

座って資料の確認をしていたら

カップルの笑い声が聞こえた。
まさかホテル迄一緒とは・・・。

2人は腕を組み仲良く入ってきた
スタッフとの食事会に出かける為の
待ち合わせのようだ
そんな風の
会話が聞こえてくる。


慶一道がハッとした顔をした。
陽和に気付いたようで、チラチラ
気にしているのを見て
ジオンが何かを感じたのだろう。


陽和は資料をバタバタと片付け
始めた。

すると彼女のピンクの可愛らしい
花に囲まれたサンダルから
赤い爪がピカピカ✨して見えた👀

「こんばんは、よく会うわねクスッ
もしかして・・・慶一道のストーカ?」
甘く整った顔は男心をくすぐるの
だろう、それなりのオーラがある。


「なんの事ですか?
連れもいますし、私仕事で来てま
す。」

「嘘‼」
ジオンは笑いながらも目を釣り上げ
投げつけるような声を出した。

「日本語、上手いですね。
慶一道、彼にベッドで習ったの?」

「違うわょー ゚皿゚キ─︎─︎ッ!!
元彼が日本人なの‼
`Д´💥💢」


「で‼新彼も日本人ね。ヘイヘイ
日本人が好きなんだーへー」

「慶一道が好きなの‼
タイプなの‼
あなた邪魔しないで‼」

キッと睨むピンクの唇はハツキリと
そう言った。

ジオンは慶一道が好きになっていた。
だから度々現れる陽和に動揺する
慶一道が気になっていた。

「貴方、慶一道の何?
慶一道とはどんな関係?」

「はあ?」
陽和はわざとオーバアクション。

「どんな関係?
┐( ̄ヘ ̄)┌ ヤレヤレ・・・
どんな関係も持ちたくありません
けど?

クククあんたと同じにしないでよ。
いい加減にしてよ‼
馬鹿?」
ガタッ‼
咄嗟に陽和は立ち上がりジオンを
睨みつけた。


「ジオン、よせ‼」

慌てて慶一道が駆け寄りジオンを
なだめ始めた。
そんな様子を見た陽和は、

「バカバカしい!
こんな所でヤキモチか?
トップモデルが笑わせる。」

その一言に慶一道が唖然とする。

「慶一道に、とっては身体で繋ぎ
止めたい大事な人かもだけど
ヤキモチ妬いて、人をストーカ扱い
する馬鹿女じゃん。

甘やかし過ぎでしょって‼
自分の、 お.ん.な. ならちゃんと
躾なさいよ‼」

《《`皿´)キーッ!!なによー、》》
なにおー
ι(`ロ´)ノコノヤロウ!!
ジオンは陽和に掴み掛かって来た。

陽和も負けずに応戦する
《《ヽ(o`Д´o)ノなんだよ‼》》
ヽ(`Д´)ノバカヤロー

突如始まった女の戦い‼
陽和は髪を引かれボッサボサ
ジオンはやはり髪を引かれ
グッチャグチャ‼

ヤバイと思った慶一道はジオンを抱きしめ陽和を睨んで言った。

「顔はジオンの商品だ、傷を付ける
のは許さない。」

慶一道は自分の身体全体を使って
ジオンを抱き締める事で
ジオンを陽和から守った。


陽和はボーボーの髪で

「私から掴みかかっていないわ、
この女が先に髪をひいたのよ。
自己防衛の、何が悪いの?
《《教えてよ‼》》」

陽和の頬をツーっと、赤い血が流
れた。

陽和はそう呟いたあと流れた血を
ハンカチで拭いて傷口を押さえた。

「ジオンがつけた、傷は
許せるんだ。」

〈あ、陽和大丈夫か?〉

慶一道は陽和に近づこうとしたが
取ってつけたような心配はイラネ。
陽和の足が引いた。

慶一道は《《あつ‼》》陽和のその傷
を見て絶句した。


「彼女がモデルって知ってるし、
私、彼女には傷付けていない。
私に付けられた傷は、許せるん
だよね。

私も病院関係者よ、人を怪我させ
たリしない。
爪だって毎日切ってる。

ねえ、あんたといたら
ろくな事が無いの‼

お願い、もう私に関わら無いでよ。
連絡先消して、じやないと又
ジオンに掴みかかるかもよ。↗‼」

《《ガオ﹏ฅ(✧"✧)ฅガオー》》

そう言ってその場を去った。


呆然と立ち尽くす慶一道は
何をどうしたらいいのか分からず
アタフタとしていた。

ジオンだけがしてやったりと
ニンマリ笑っていた。



陽和は思っていた。
アイツは何があっても私を守らない!
守ってくれない‼


全国民の前で
「僕が全力で彼女を守ります。」
と、宣言されたお方が羨ましい。

「全チャラ男よ、
見習いたまえ‼」
慶一道は口ばかり、あのお方の
足元にも及ばない!


そう頭に来たまま朝早くドスドスドスとホテルを後にした。


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