愛というもの~哀しみの中で~
そこでふと、明日から仕事なのに今日もうちに来るのかな?って思い、電話をかけてみた。

『もしもし?』

電話に出たかと思ったらなぜか女性の声だった。

「えっ?あの、これ大吾のケータイじゃないですか?」

『あぁ、これ大吾のケータイだった。ごめん、寝ぼけて間違えた。大吾なら今寝てるけど?何か伝える?』

全身から血の気が引いていく感じがして、耳鳴りがする。

「い、いです。」

何とか答えて相手の言葉を待たずに電話を切った。
そのままそこに座り込んで体に力が入らなかった。心は忙しくやっぱり…だったり、どうして…を繰り返し考えていた。
結局、私なんかを少しの間でも相手してくれたことを感謝しなければと言い聞かせた。
そして次会ったときは何事もなかった顔をすればもう少し一緒にいられるかな?

独りで生きていくつもりでいたのに…今は大吾がいない人生をどう生きていいかわからなかった。

気づくと電気を付けていなかった部屋は真っ暗になっていた。
炊飯器のタイマーをかけており、お米の炊けた匂いが部屋に充満していたけど、食べる気にはならなかった。

明日からは朝早くからまたお弁当詰めのバイトが入っており、なんとか自分を奮い立たせてお風呂を沸かし入った。
お湯に浸かっていると、言いようのない不安が込み上げてきて涙が出た。
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