愛というもの~哀しみの中で~
その日は気を緩めると芹沢さんの顔が頭に浮かんだ。ミスこそしなかったけど効率は悪かった気がする。
11時半まで働いて13時にはチラシ配りの会社の事務所に行きチラシを受け取り、指定されたエリア内に自転車でチラシを配って回る。
終わり次第学校だけど荷物を取りに家に帰らないといけないから急いで配って回らないと間に合わない事もある。
午後からは芹沢さんの事は考える暇もなく、学校では昨日先生に注意されたから何とか真剣に授業を受けた。

今日は自転車で学校に来たからスーッと校門を通り抜けようとしたとき芹沢さんが見えた。
急ブレーキで止まるとヨロッと転けかけた。
それを見て芹沢さんは笑いながら駆け寄ってきた。

「茉莉ちゃん大丈夫?見事な急ブレーキだったよ!」

そう言いながら笑っていた。
私は恥ずかしくて俯いたまま自転車を押して家の方へ歩いた。
何だか今日もまた芹沢さんが来てくれたことが嬉しかった。
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