愛というもの~哀しみの中で~
私は何を言っていいかわからなくていつも大吾が言ってくれていたことを言った。

「大吾、いつもありがとう、大好き、愛してる。」

もう冷たくて暖かさがなくなっている手を握った。
それは今日も恭吾の頭をなで、私を抱きしめてくれた手だった。

「大吾、俺、茉莉ちゃんも恭吾も守るから。約束する。」

昌くんは大吾にそう言っていた。
それから間もなくして心臓マッサージを中止され、死亡宣告を受けた。
医師からの説明ではほぼ即死状態だったらしい。
夢を見ているようだった。とっても悪い夢。そして大吾は目の前で冷たくなって横になっているのに実感が全くなかった。
顔は半分ガーゼに覆われているけどきれいにしてもらっており、本当に眠っているみたいだった。

ずっと昌くんは私の横についていてくれた。
恭吾のお迎えは由実ちゃんが行ってくれたらしく由実ちゃんの実家に由彰くんと一緒にあずかってもらっているらしい。
そこから大吾の先輩や会社の社長などが入れ替わりにきては私に謝っていた。
私はずっと大吾の横にいて泣いたり、落ち着いたり、発狂したりと自分が自分でわからなかった。
その日、葬儀会場に大吾と一緒に移動すると喪服などもそこで用意してもらった。
恭吾は由実ちゃんとお母さんと由彰くんと一緒によるご飯を済ませてから連れてこられた。
由実ちゃんのお腹にはもう一人赤ちゃんがいて、すでにもう大きくなっている。
女の子らしくて大吾も産まれてくるのを楽しみにしていたのに…。
< 199 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop