愛というもの~哀しみの中で~
恭吾は昌くんの腕の中で暴れだした。
でも昌くんもがっしりしているから恭吾が暴れたくらいではびくともしていなかった。

「ハハッ、泣いていいぞ。そして強くなれ。」

そう言って恭吾を抱きしめていた。
それから間もなくして後ろから来た車が隣で停まった。助手席の窓が開いて真さんが顔をだす。

「茉莉さん待って。きちんと話そう。昌も、乗って。」

言われるままに昌くんは恭吾と後部座席に乗った。
恭吾をチャイルドシートに乗せてくれていた。恭吾は真さんの顔を見て安心したのか泣き止んですんなり乗っていた。

「さぁ、茉莉さん。どちらにしても茉莉さんの家にかえらないと仕事にも行けないから。」

そうだった。まだ真さんの荷物は私の家にあるんだった。
私は仕方なく助手席に乗った。

「勝手に帰ってごめんなさい。お付き合いしている方にも。ずっとうちに来てくれていたからあちらはいい気分ではなかったでしょうね。土日も恭吾の世話をしてもらって…。」

「彼女とは仕事関係で知り合ってね、職場が近くなんだ。昼休み時間が合えば会っていたよ。きちんと話もしていたから大丈夫。彼女は俺よりも大人だから理解はしてくれてるよ。」

昼休みに…。会っていたんだ。知らなかった。でも当たり前だ。
< 243 / 350 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop