愛というもの~哀しみの中で~
私たちはバスに乗って私の家へ向かう。
大吾は大きなバッグを持っており、私がケーキを膝に乗せ、大吾がチキンを持っていた。
申し訳ないほどチキンはいい匂いを撒き散らしバスの中に充満していた。

私たちは初めて一緒に過ごすクリスマスに浮かれて、バスの中でもしゃべり続けていた。
家に着くと、まずケーキを冷蔵庫に入れた。
家の冷蔵庫は小さいけれど何かでいっぱいということがなくてケーキの箱の存在感がすごかった。

「俺いろいろ持って来たんだ。これが、茉莉の衣装で、これが俺。あっ、でもまずは飾り付けね。」

大吾は楽しそうにカバンからサンタの衣装や壁に飾る飾りに、なんとクリスマスツリーまで買って来ていた。

「ツリーも買ってきたの?」

「そうだよ。玄関の下駄箱の上にある小さいツリーじゃ寂しいし、これ電気も付くぞ。」

そう言ってツリーの箱を開けて組み立て始めた。

「どこにおく?コンセントの近くがいいけどなぁ……ここでいいかな?」

大吾はさすが大工見習いで、テキパキと組み立てて部屋の壁飾りもし始めた。

「フフッ、さすが、大工さんみたいに手早くてかっこいい。」

「ヘヘッ、そうだろ?惚れ直しただろ?」

「うん。」

私が素直に返事をするとドヤ顔の大吾の顔が照れたように赤くなった。
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