天満つる明けの明星を君に②
君が望むなら、と静かに言った天満の目には、ただただ優しげな光が瞬いていた。

・・・当たり散らすことしかできない自分を恥じたが、自らの奥底にある得体の知れない存在と、得体の知れない存在と天満の関係性について、どうしても知りたかった。

切り出すなら今しかない、と思った。


「待って下さい。まずは私から話を・・・」


「話?」


もぞりと身体を動かして体勢を変えた雛乃は、言葉を選ぶために少し黙り込んだ。

天満はそれをじっと待ち、息を殺すでもなく自然体で待ってくれていた。


「私の中に、誰かが居ます」


そう切り出すと、天満の喉仏が大きく動くの分かった。

やはり何か知っているのか、と期待半分、不安半分で天満を見つめた雛乃は、天満の浴衣の胸元をぐっと両手で掴んで身を乗り出した。


「誰なんですか?天様は知っているんですね?」


「…恐らく、はね」


「私、まだちゃんと向き合ったことはないんです。見たことのない景色を見たり、その人が時々囁いて来るんです。“あの人が要らないならちょうだい”って」


ーー天満はその話をいつ話してくれるだろうか、と思っていた。

何故ならば、雛乃は時々…“雛菊”そのものの顔をして遠くを見ている時がしばしばあったからだ。

やはり雛乃は雛菊で、雛菊は雛乃。

どちらかを否定してしまうのは、魂を否定するのと同じこと。

自分はそれを雛乃に説いて納得してもらわなければならない。

ーー雛乃の中にはやはり雛菊が要る…それが分かっただけで大した進歩と言えるだろう。


「雛ちゃんは向き合いたいの?」


「え?だって…知らない人の声…いえ、私そのものの声なんですけど…知りたいです。でも…怖い…」


「大丈夫。怖い人じゃないよ。…今まで昔のことを随分掻い摘まんで話したけど、ちゃんと話すから」


きっと目の前が開けるから。


ーー天満はそう言い、行灯に火を点した。
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