目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「なに?何かおかしかった?三国さん、俺変なこと言ったかな?」

「いえ、別に。通常通りかと」

もう、どんな掛け合いも殿様と家老に見えてしまい、笑いをこらえるのに必死だ。

「……お二人はとてもいいコンビだと思います。これで会社も安泰ですね!」

と、訝しむ2人に当たり障りのない答えを返しておく。
すると、三国さんは少し嫌そうな顔をし、蓮司さんは満面の笑みを浮かべた。
この微妙な温度差が堪らなく面白いわ!
なんて考えていることは絶対言えないな、と思った。

「では、私はこれで。奥様失礼致します」

手元の書類をブリーフケースに入れ、三国さんはスッと立ち上がった。

「あ、はい。三国さん、お手数をお掛けしました」

「ご苦労様。すまないけど、もう暫く頼むよ。何かあったら電話して?」

「承知致しました」

三国さんは私を見てとてもいい笑顔をし、蓮司さんを見て深々と頭を下げる。
そして、カツカツとヒールを鳴らしながら、颯爽と玄関を出ていった。
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