目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
薄くスライスした白身魚を美しく重ね合わせ、花が咲いたように盛り、その中心にはイクラを乗せている。
また、同じ様に鮭でピンクの花も作り、その中心にはキャビアが乗っていた。
それらがまるで陳列された宝石のように見え、百合は感嘆の声を上げたのだ。

「食べるのがもったいないね?」

と言うが、食べる気満々なのはもう知っているよ?
この短い間にも、俺は百合のことを多く学んでいた。
嬉しいこと、悲しいこと、嫌いなこと、好きなもの。
『百合マイスター』を名乗ってもいいかもしれないと思うほどに、彼女に夢中だった。

今、百合は、食べる宝石に夢中だ。
いただきますと手を合わせ、ナイフとフォークを取り、少し辛そうに花の宝石を崩す。
そして、口に入れると今度は百合が花になったように微笑んだ。
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