目覚めると、見知らぬ夫に溺愛されていました。
「出来た」

私達は三歩下がって絵画を堪能する。
すると、白だけのシンプルな空間に天井から光が射すように色が溢れてきた。
昼の眩しいくらいの陽射しが迫ってくるような迫力。
それでいて、懐かしいような哀愁。
これをあの写真だけで、表現するんだから、柾敦という画家は、思っているより凄い人なのかもしれない。

「素敵……圧倒されるね?」

「うん。天才かもな?」

おどけて言う蓮司さんに、私も同意した。

ドォーーーン!!

突然響く大音量に、振り返ると、寝室の大きな窓に、大輪の花が咲いた。

「始まったね!!」

「バルコニーに出よう」

笑う彼に手を引かれ、急いでバルコニーへと移動した。
少し涼しくなった海風が、潮の匂いと火薬の匂いを運んでくる。
夏が来た。
そう思わせる定番の匂いに、私の心は踊った。
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