俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
葵羽ルート 15話「残り香」





   葵羽ルート 15話「残り香」



 葵羽が連れていってくれたのは豪邸が建ち並ぶ住宅街だった。
 その中にある5階建ての建物だった。それを見て、一戸建てではないのだとホッとしつつも、綺麗な建物を見てソワソワしてまった。


 「ここの最上階になります」
 「あ、はい」
 「緊張しなくていいですよ。それに、彩華さん、ここに来たかったんですよね?」
 「………葵羽さん、少し意地悪になりました……」
 「そうですか?」
 「はい」 


 恥ずかしい事を言われ、唇を尖らせて文句を言うと、葵羽はクスクスと笑った。
 そして、「……ですが」と言葉を続ける。


 「これが、本来の自分なのかもしれませんね」


 そう言って、葵羽は指をパネルの当てる。指紋認証なのか、ドアは自動に開いた。
 エレベーターが来ると、葵羽は5階のボタンを押す。


 「ここはとても静かなんですよ。周りも住宅街ですし、坊音がしっかりしてあるので」
 「あ、そうですよね」


 葵羽はピアノの演奏者だ。ピアノの練習をする時に時間を気にせずに出来るのは大きいのだろう。彼がこの家を選んだのは、そう言ったわけがあったのかもしれない。


 「え………あれ?」


 エレベーターを降りた彩華は驚いて声をあげてしまった。
 5階に降りると、そこには短い廊下しかなく、1つの扉があるだけだった。


 「あぁ、この建物は1フロアに1部屋ずつしかないんですよ」
 「え………じゃあ、この最上階は………」
 「はい。私の部屋だけです」


 そう言うと、葵羽は鍵を取り出して部屋の扉を開けてくれた。「どうぞ」と、部屋に招かれゆっくりと入室しながらも、葵羽はやはりすごい人なのだと彩華は再確認した。


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