俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方



 そんな日が半年続いたある日だった。
 その日は大雨の日だった。
 兄が帰ってこないと、弟の日和から連絡が来たので、独り暮らしを始めていた葵羽は急いで実家に戻った。神社にももちろん居ないので、心配して待っていた時に、ガラッと玄関の扉が開く音が聞こえた。その時間はもう深夜になっていた。

 葵羽と日和は慌てて玄関に向かうと、光矢がずぶ濡れになって玄関に立っていた。


 「兄さん!」

 
 2人は駆け寄り、光矢に触れる。体は冷えきっており、目は虚ろだった。そして、兄の腕を掴んだ葵羽はハッとした。女性のように兄は痩せ細っていたのだ。


 「………日和、タオルを持ってきてくれ」
 「う、うん!」


 日和はパタパタと部屋の奥に走っていく。
 葵羽は「兄さん……」と話しかけると、光矢は瞳だけ葵羽に向けた。光のない真っ黒な目だった。


< 122 / 229 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop