俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方



 「このお話がすごい素敵なんだもん。………こんなストーリーを考えられて、そして絵も描けるなんてすごいね、祈夜くん」
 「……大袈裟だよ」
 「そんな事ないよ。………この間本屋さんに行った時に、祈夜くんの漫画本を見たんだけど……とっても人気なんだね。平置きになってて、ポップまであったから。その理由は読んでよくわかったよ。絵はとても綺麗だし、お話もキャラクターも魅力的で。私、祈夜くんの描くお話、すごく好きになったよ」
 「…………俺が少女漫画描いてるって事、彩華にどんな風に言えばいいのかわからなかったんだ。」


 突然、話の内容が変わり、彩華は驚いたけれど、それが彼が話したいことなのだとわかり、彼の言葉をジッと聞くことにした。祈夜が気にしていることは何となくわかっていたので、その話をされる事の方が驚きだった。


 「前にも言ったけど、少女漫画が好き、しかも仕事にまでしてる男って、普通じゃない………一般的な趣味でも仕事でもないだろ?実際バカにされたり、信じられないって顔で見られたこともあるしな。………彩華はそんな事を気にするわけないってのもわかってた。きっと、応援してくるだろうって思ってた………だけど、もし違ったらって考えたら……おまえになかなか言い出せなかったんだ。仕事の事とか、内緒にしてて悪かった。………ごめん」
 「大丈夫だよ。そんな事、気にしてない」
 「………彩華がこうやって俺の作った漫画を読んで泣いてくれたり笑ってくれたり、すごいって笑顔で褒めてくれたりするの。やっぱり嬉しい………他の奴に、何て思われてても、なんか気にする必要なんてないって思えた」


 祈夜は真面目な話をするのが恥ずかしいのか、少し頬を染めながらそう言い鼻先を指でかいた。その表情はどこかすっきりとしていて、自分が祈夜の悩みを少しでもなくせていたならいいな、と彩華は思った。


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