俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方



 「彩華………彩華………」
 「ん………あれ?」


 温かい手で肩をポンポンと叩かれる。
 優しく自分の名前を呼ばれて、彩華は目を開ける。いつの間にか眠ってしまっていたようで、体には毛布が掛けられていた。


 「ご、ごめん!寝ちゃってた………祈夜くんが頑張ってるのに寝ちゃうなんて、本当にごめんね!」
 「いいさ。モデルって疲れるから。それより体冷えてたからお風呂沸かしといた。入ってきて」
 「ありがとう……」
 「いや、俺こそ助かった。ありがとう」
 「うん」

 彩華は寝ぼけながらも、ふにゃりと笑うと祈夜もつられて笑ってくれる。
 彼の厚意に甘えて、彩華はお風呂を借りることにした。祈夜は疲れた様子だったけれど、とてもすっきりとした表情に見えて、彼のモデルになってよかったと改めて思った。
 自分の顔も体型にと自信がないけれど、彼が好きだと言ってくれる。その事が「彼の役に立ちたい!」という気持ちを後押しさせてくれたのだ。


 湯船に入りながら、「スケッチ見せてもらおう」など、先ほどほ事を考えながら体を温めた。今日は彼の家に泊まっていもいいだろうか。クリスマスを一緒に過ごせなかったので、久しぶり祈夜と共に眠りたかった。
お風呂を上がったら彼にお願いしようと考え、いつもより念入りに体や髪を洗わなければな、と思った。彩華のシャンプーや洗顔などは、彼が準備してくれていた。自宅で使っているものよりも、良いものばかりで申し訳ないけれど、「彩華のために買ったから使って」と言われると、嬉しくてついつい甘えてしまう。ローズの華やかな香りがするボディーソープを使い体を洗っている時だった。

 彩華は指に何か付いているのに初めてて気づいた。彩華は泡をよけてから右手の薬指を見つめる。すると、そこには赤い宝石が埋め込まれたシルバーのリングがはまっていた。もちろん、彩華の物ではない。


 「………え、これ………もしかして……」


 指を目の前に持っていくと、瞳いっぱいにキラキラと光る宝石の不思議な赤い光が入り込んでくる。それは、初めて祈夜と会った日に、彼が作ってくれたカクテルのような色だった。



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