俺様紳士と甘えた彼とのハッピーエンドの選び方
葵羽ルート 6話「不安な夜」





   葵羽ルート 6話「不安な夜」




 初めて葵羽が彩華の部屋に遊びに来た日。
 葵羽は約束の1曲を弾いたあと、帰っていった。
 彼は自分の事を大切にしてくれている。初めての恋人だから、きっと急がずゆっくりと、と思ってくれている。
 それは理解しているけれど、彩華はどこか落ち着かなかった。

 葵羽は紳士的で優しい。そして、少し強引なところもあるけれど、それでも彩華は甘えてくれているようで嬉しかった。
 けれど、少しずつ「あれ?」と気になってしまう事が多かった。些細なことかもしれない。せれど、保育士をしているせいか、人の些細な変化を察知しやすい彩華はそれがどうも気になってしまうのだ。

 料理を作ると言った時の反応もそうだ。
 彼は困った顔をしていた。それはどうしてなのだろうか?
 始めは手料理を食べるのが嫌だったり、野菜嫌いなのかなとも思った。けれど、彩華の部屋に来た彼は、美味しそうにご飯を食べてくれていた。
 ならば、何をされるのが困ってしまってしまうのか。
 彩華は考えたけれど、よくわからなかった。


 それに、彩華の事を心配してくれるのは嬉しいけれど、少し過保護になりすぎているのも気になる部分だった。
 優しくしてくれるのは嬉しいし、これが恋人というものなのかもしれないけれど、葵羽は彩華にとても尽くしすぎているように感じられた。
 それに、甘えてもくれる。キスもしてくれるし、抱きしめてくれる。それはとても嬉しい事だけど、彼はそれ以上は求めてこない。言葉では、そのように言っているけれども、キスだけで、触れる事はほとんどしてこないのだ。
 葵羽と彩華はいい大人だ。
 そのような関係になるのは早いのかなと思っていただけに、彼が慎重になっているように感じられた。

 けれど、自分が彼を求めすぎているだけなのか?初めての恋人なのにはしたないのかもしれない。そんな風に思っては、彼に話をすることは出来ないでいた。


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