身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~

「なによ。どうして?」
専務室に入るなり、薫子は呟くようにそう言った。

「今、俺はどうしようもなく怒ってる。その訳はわかるな?」
努めて冷静に自分のデスクにもたれ掛かかると、俺は薫子を見た。

「わからないわ。私が何をしたのよ」
それでもキュッと唇を噛んで俺を睨む薫子に、俺も強い視線を送る。

「礼華に何を言った!」
「本当のことしか言ってないわよ! ずっと昔から社長になりたかったって。そのためにはあなたじゃダメだって! 本当のことじゃない!」

一気に言ったことで何度も呼吸を繰り返す薫子の言葉に、俺はグッとこぶしを握り締めた。
確かに嘘ではない。
ずっと社長になるために生きてきたし、そのために誰かと結婚をするかもしれない。
そう思っていたのは事実だ。
しかし、それは礼華と出会う前の俺であり、今の俺ではない。

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