身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~

運転手付きの車なんて初めて乗ったな……。

温かい車内に安堵しつつ、ゆったりと座ることもできず、私は乗せられるがまま大村さんの横にちょこんと座った。

「もっと深く座れば?」

「いえ……。濡れてますし」

落ち着きません。こんな高級車。
最後の言葉は言うことができなかったが、私は後部座席で小さくなっていた。

そんな私に、「気にすることないのに」そう笑いながら言うと、運転手さんとナビを見ながらはなす大村さんを私は見ていた。

「高速も通行止めだし、一般道も雪が積もってきたから……」
そこまで言って言葉を止めた大村さんに、私はすぐに降りなければいけないことを察して言葉を発した。

「大丈夫です。近くで降ろしていただければ」
その言葉に、大村さんは困ったような、驚いたような表情を見せた後、おもむろにスマホを出した。

「はい、大村です。実は雪で、うちに……ご挨拶は改めて」
断片的に聞こえる言葉からは、誰と話しているかわからなかったが、なるべく電話の内容を聞かないようにと、窓の外の雪を眺めていた。

< 40 / 183 >

この作品をシェア

pagetop