身代わり婚~偽装お見合いなのに御曹司に盲愛されています~
昨日よりましになっていた、かすれた声で返事をする私に、お母さんは早く寝るように促す。
久しぶりの自分のベッドは、冷たくて狭くて自分の物でないないような気がした。

いつのまにか、あの悠人さんの香りがするベッドに慣れてしまっていた自分にため息をつく。

「入るわよ」
体温計を持って現れたお母さんに、私は「ごめん」と小さく呟いた。
「いいけど。悠人さんには言ってきたの?」
本当に嫁に出した娘に言うようなセリフに、私は少し苦笑した。
「手紙は書いてきた。移したくなくて」
その言葉をすんなり信じたのだろう、お母さんは私に体温計を渡す。
「食べたいものは?」

「桃の缶詰」
即答した私に、お母さんは「いつものね」と笑うと音の鳴った体温計をみた。

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