見ツケテ…
そんな友江を見下ろして「今日で会うのは最後だ」と、言い放ったのだ。


お腹の子供の認知はもちろんできない。


かといって堕胎のためのお金を払うつもりもなかった。


すべて友江1人にまかせて、俺は知らん顔をして生きてくつもりだった。


家に帰って、友江の番号を着信拒否すればそれですべては終わり……の、はずだった。


俺の考えはそんなに簡単には通らなかった。


「逃がさないわよ」


友江が今まで聞いたことのないような、低く、怒りを込めた声で言った。


同時に、足首を掴まれた。


「おい、いい加減にしろよ」


這いつくばるようにして俺を引き止める友江は本当に滑稽だった。


こんなことをしてまで男を引き止めておきたいものかと、ため息が出た。


「私のお腹にはあなたの赤ちゃんがいる。でも、奥さんにはいないでしょう?」


そう言う友江は不敵な笑みを浮かべていた。


確かに、妻にはまだ子供がいなかった。


けれど、俺たちは結婚したばかりだし、焦る気持ちは1つもなかった。


「それがなんだよ。妊娠したら勝ちだとでも思って思ってんのか?」


友江を見下ろしてそう言うと、友江が悔しそうに顔を歪めた。
< 193 / 210 >

この作品をシェア

pagetop