愛され秘書の結婚事情
その時、突然、七緒の膝が崩れた。
「わっ……」
驚いた悠臣が慌てて両手で支えると、七緒は崩れそうな体を相手の腕に寄りかかることで持ちこたえようとした。
しかし結局堪えきれず、後ろの椅子にガクリと座り込んだ。
「大丈夫?」
手を貸しながら悠臣が訊ねると、七緒は赤らんだ顔で「すみません」と詫びた。
「こんなキスをされたのは初めてで……。だんだん胸が苦しくなって、足もガクガクしてきて……」
「え……」
「本当に未熟者で、申し訳ありません……」
赤らむ頬を片手で押さえ、七緒は恥ずかしそうに詫びた。
その初々しい反応を見て、悠臣はまた一つの予感に「もしや」と顔色を変えた。
彼は彼女の足元に片膝を突き、その顔を下から覗き込むように見た。
「七緒さん」
「はい……」
「もしかして君……未経験なの」
七緒は目を見開いて、「どうしてお分かりに?」と言った。
「え。ホントに? 本当に未経験なの?」
「男性経験の有無ですよね。ええ、キスまでしかしたことがありません」
いい年をして、お恥ずかしい話なんですが……と彼女はうつむいた。