愛され秘書の結婚事情
「ま……」
(マジか……)
年甲斐のない言葉が出そうになって、悠臣はガックリとうなだれた。そしてそんな彼女に手を出しかけながら、それを思い留まった自分をグッジョブと褒めてやりたかった。
「あ……もしかして、失望させてしまいましたか」
「いいえ……」
苦笑いして、悠臣は弧を描いた目で彼女を見た。
「これはより一層、頑張らねばと思っただけです」
「桐矢さんが頑張るとは、何についてですか」
「あなたに関わるありとあらゆることですよ」
柔らかな笑みを浮かべ、悠臣はそっと七緒の手を取った。
両手を繋いだまま見つめ合い、彼は彼女に言った。
「言ったでしょう。僕はあなたに愛される努力をすると。そのためには常に、どうすることがあなたにとって最善か、それを考え動く必要がある。……たとえば今日の、僕の行動」
朝の自分の軽挙を思い出し、彼は自嘲気味に笑った。