愛され秘書の結婚事情

4.


 七緒と悠臣の同棲生活は、意外なほど順調に続いた。

 平日、七緒は以前のように五時半に起き、日課の雑事をこなしてバスで出社する。

 悠臣は七緒が出勤する頃にのそのそ起き出して、とりあえず玄関先で彼女を見送った後、彼女が用意してくれた朝食を食べ、自家用車で出勤する。

 夜は、常務とその秘書という立場を利用して、一緒に車で帰宅する。

 そして外食かマンションのルームサービスを利用して夕食を済ませると、あとは二人の時間を楽しんだ。

 休日にもなれば、その親密さはぐっと増す。

 悠臣は彼女の全てを肯定し、愛し、彼女のどんな表情も見逃すまいとしているかのように、ずっとその傍らに寄り添った。

 七緒もまたそんな彼に全てを委ね、寛いだ無防備な素顔をさらし、男が注ぐ愛情のシャワーを浴びながら、女として美しく花開いていった。

 女性として開花した七緒を見て、今更ながら周囲の男たちは彼女の魅力に気付き、慌ててアプローチを始めたが、時すでに遅かった。
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