愛され秘書の結婚事情

 彼女の体を両腕に抱いて、悠臣は心の中で叫んだ。

(ああ、あなたの仰る通りでしたよ、先生……! 僕が馬鹿でした!)

 そして彼は、感に堪えない表情で彼女を見つめた。

「七緒……」

「はい。なんですか、悠臣さん」

 悠臣が両手で顔を包むように触れると、七緒ははにかみながら微笑んだ。

 仕事着から私服に着替えた彼女は、すでに秘書の仮面を外し、ただ一途に純粋に彼を愛する、一人の恋する女に戻っていた。

「これが、ギャップ萌えなのか……」

「え?」

「何でもない」

 自分の勘違いを詫びる意味も込めて、悠臣は彼女に優しく口づけた。

 いきなり甘いキスを貰い、七緒は「はぁ……」と艶っぽい吐息を洩らした。

 その表情と声で、彼の我慢は限界に達した。

「……七緒」

「はい」

「小料理屋は、また今度でいいかな。……今日は後で、ルームサービスを取ろう」

「え?」

 目を瞬く七緒に、悠臣は二度目のキスをして言った。

「君が欲しくてたまらないんだ。……だめかな」

 七緒は一瞬驚いた顔をしたものの、彼女の方にもそれを拒む理由はどこにもなく。

 少し恥ずかしそうに目を伏せて、彼女は「はい」と頷いた。
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