愛され秘書の結婚事情
そこで悠臣も体を起こし、二人はベッドの上で向き合った。
「七緒。本当は今日、誰と会っていたの」
「え……?」
「僕、見たんだよ。ちょうど会社の前に到着した時に、君が見知らぬ男とタクシーに乗るところを……」
「……え」
そこで七緒が顔色を変えたのを見て、悠臣は辛そうに眉をひそめた。
「もしかしてあの男性は、学生時代にちょっとだけ付き合ったっていう、幼馴染の子かい」
決定的な現場を見られていたと知り、七緒は観念してうなだれた。
「はい……そうです。彼は同郷の幼馴染で……塚川央基といいます」
「どうして彼は東京に来たの。君に会いに来たの」
悠臣の声は静かで、七緒を責める響きはなかった。
実際に彼の心は凪いでいた。さきほどの彼女の行動と今の態度から見て、七緒が今も自分を好きなことは明白だった。
その事実さえあれば、彼は何も怖くなかった。