愛され秘書の結婚事情
地元の無名の私立大を一年留年して卒業した彼は、当然どこの会社からも内定をもらえず、しばらくフリーターのような暮らしをしていた。
見かねた父親の口利きで、央基の家が経営する不動産会社に中途採用してもらい、半年前に昇進して営業係長になった。
そんな彼が、大口の取引先を見つけたと張り切って商談をしたのが、実は外国の詐欺グループで。
相手の口車に乗って手付金を払ったところで、実は詐欺だったと判明した。
その被害額は、三千万円。
到底、弟一人の力で返し切れるものではない。
幸い詐欺グループはすぐに検挙されたが、支払った三千万の内、いくらまで戻って来るかは不明だ。
「それでうちの両親は、塚川さんのところに直接お詫びに行きました。当然、被害に遭った三千万円もお返しすると約束しました。三千万は大金ですが、祖父が残してくれた不動産を処分すれば、おそらくそのお金は作れると思います」
沈鬱な表情で身内の窮状を語る七緒を、悠臣は無言で見つめた。