愛され秘書の結婚事情

「いえ。辞めたいわけではありません……」

「辞めたくないのに、どうして辞めるの」

「……そういう約束だからです」

「約束?」

「はい。父とそういう約束をしたんです。上京を許す代わりに、三十歳までに結婚相手を見つけると」

「けっ……こん?」

 七緒の告白に、悠臣は面食らったように目を瞬いた。

「え。つまり、三十歳までに結婚しないと、実家に戻らないといけないってこと?」

「そうです」

 七緒は神妙な顔でうなずいた。
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