愛され秘書の結婚事情
紫檀の長机を間に挟み、竜巳、昌輝、路子、向かいに悠臣、七緒の並びで座る。
全員が揃ったところで、悠臣は言った。
「改めてご挨拶します。桐矢悠臣と申します。伯父が会長を務める株式会社サブマリンで、本社常務取締役をしております」
「えっ、すげっ!」
竜巳が小さく声を上げたが、昌輝と路子は黙っていた。
「七緒さんは三年前から僕の専任秘書を務めてくれています。彼女の仕事への真摯な姿勢とその人柄に惹かれ、結婚を前提とした交際を申し込ませていただきました。ご報告が遅れましたが、彼女とは一ヶ月前から、僕の自宅で同居を始めています。今日、ご両親に結婚の許可を頂いたのちに、彼女と結婚に向けての話を進めていきたいと考えております」
「え。姉ちゃん同棲してんの。すげー」
「竜巳。あんたはちょっと黙っていなさい」
母親に叱られて、竜巳は不満気に口を尖らせた。
「……今回はなぜ急に、こちらにいらしたんですか」
ようやく昌輝が口を開いたが、その言葉に七緒は首を傾げた。
(なぜってそんなの、今悠臣さんが、結婚の挨拶って言ったのに……)
昌輝は続けて言った。
「あなたと娘のことはすでに、先週いらした使いの方から詳細に伺いました。その時に、私どものお返事をお伝えしたはずですが」