悪役令嬢になりきれませんの。
夏季休みですが。令嬢





さぁさぁ。都心も暑くなり学園も長期の夏季休みに入った今日この頃。私と両親は玄関の前にとまってる2台の馬車を前に抱き合っている。







「シャルネラちゃん。お母様はとても悲しいわ……いくら王妃教育だからって……シャルネラちゃんと領地に帰れないなんて……」





「シャルネラ。悪いことは言わん。王妃なんて望まずお前だけに一筋な奴と結婚し、お父様と一緒に領土を営んでいこう……」









泣きつく2人に苦笑しながらも2台の馬車が並んでいるうちの1台の扉を開け、両親に微笑む。









「お父様、お母様……私も寂しいです。けど、淑女の鏡の王妃殿下に教えて貰えるのだから私はそれを有難く受けたいのです。私が王妃を望む望まないなど関係ない。自分を磨く1歩となるのなら私は頑張ります。」






「シャルネラちゃん……」

「シャルネラ……」






2人同時に私を見る。そんなふたりに微笑めば2人は顔を見合せ私を見る。






「そう、だな………シャルネラの為になるのならお父様はシャルネラを応援しよう。幸い城にはライバ殿もいらっしゃる。義兄さんが居たらシャルネラを守ってくれるだろう。魔の手から…………」





「そうね!お兄様がいらっしゃるし、シャルネラちゃんのためならマナスライカ(宰相の妻)義姉様もご協力してくれるはずだものね!魔の手から遠ざけるために…………」






魔の手から……ってなに!?城には魔の手と呼ばれる何かが存在するの!?それは人に危害を及ばすの!?怖いんだけど、そういうのダメなんだけど!?







「お父様、お母様………やはり私も……領土に戻りたいです……」







なんて、お互いが抱き合って、話がまとまろうとしたこの場に両親が乗り込むほうではないもう1台の方の馬車の扉が開く。そして、呆れたようにため息をつきながら中から人が降りてきた。








「アベスティーナもサルマドラも諦めて領土に向かえ。シャルネラと別れを惜しむのは良いが、そろそろ行かねば着くのは夜中になる。それに、2人が要らぬことを言うからシャルネラが不安がっているだろ。」






「お兄様……だって……魔の手が」





「さっさと行け。」





「義兄さん、シャルネラを、シャルネラを魔の手から必ずお助け下さいね!!」




「あぁわかったからさっさと行け。ほら、シャルネラはこっちに。」






泣く泣く両親と別れて王城に向かう馬車に伯父様と乗り込む。無言で向かい合って座ること数秒。この無言の車内?に気まづくなり始める。







「ライバ伯父様は執務以外はそのようにお話しされるの?」





「……執務以外に敬語など必要ないだろ?」





「そ、そうですよね?」







そうなのか?なんて、思いながらもまた無言にたえながら窓の外を見ていた。次の新作の商品は食事にするか……あれも食べたいしそれも食べたいし……と、悩んでいれば伯父様に話しかけられる。








「シャルネラはなぜ、商売を始めようと思った?」






「理由は……」







そりゃ、断罪されるから、断罪される前にできるだけお金を稼いで、この国からトンズラしようかな?って考えてたけど……やっぱり一番の理由は







「家族や領土のためです。命を繋ぐにも。繋ぐ命を繋ぐにも、死んでしまっては何も残りません。生き残るにはまずは衣食住が必要になります。その3つに必要なものはやはりお金。この世は全て金次第。お金が物を言わせ、お金がものをいう。何をするにもお金が必要になります。ですから私の企業のお金半分でも領土やこれからの世を背負う子供や今のこの世を背負う人達に少しでも寄付出来ればと……」






いや、綺麗事だけを並べたけど。本心は自分のためだからね?もちろん、育ててくれた両親には私がトンズラしたあとの企業のお金は全て両親にお礼として渡すつもりだ。そのために今のうちに売上を伸ばし、商品を沢山売って私が居なくなったあとその店をどうにでもすればいいとおもってる。






「家族や領土のため……か。……」









それからお互い話すことも無く、静まり返った馬車に揺られていた。












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