悪役令嬢になりきれませんの。
両親とドアと令嬢






思考回路がショートした私だが……自分の部屋のドアを乱暴に開けた?壊した?……人物を見て固まった……



部屋の前にはこの世の終わりだ!とでも言いそうなほっそりしてるけど、がっしりした体型のスポーツ刈り風プラチナブロンドでエメラルドグリーンの瞳を持つイケメンのお父様と、紺色の緩くカールした長い髪にほっそりとした冷たい感じの吊り目の藍白色の綺麗な瞳をうるうるさせちょっときつそうに見える美人お母様がそこにたっていた。







旦那様……奥様……これは、いったい……なんて、50歳中頃の黒髪に白髪がちらちら。だが、すごくダンディー。な燕尾服を着た男性が私の部屋の扉が煙を立てて倒れているのを見て……美男美女が台無しの表情をしている両親に聞いている。




「カナル!これは重大な事だぞ!いや!これは事件だぞ!シャルネラが目覚めたと聞いたアベスティーナがシャルネラの部屋に訪れてみたが、扉が開かず……中の声も聞こえないと私の書斎に来た。そして、一緒に来てみれば扉もビクともせず中の音ひとつ聞こえない。娘の安全を確かめるためにドア1つぐらい。と思い魔法を使ったが、低級魔法ではビクともせず、中級魔法でやっと開いたのだ!!」




なぁ?心配になって扉を壊してしまうのも分かるだろ。あぁ、シャルネラ……無事かい?痛いところは?馬車から落ちたと聞いて心配したのだぞ!?そう言って私を頭から足の先まで怪我がないか確認したあと、ギュッときついぐらいに抱きしめてくる。そうかと思えばお母様までもが抱きついてくる。



「シャルネラちゃん。ごめんなさいね。あの時、シャルネラちゃんよりお母様が先に降りるべきでしたッ。あぁ、可愛い可愛いシャルネラちゃんに傷が付かずに済んで良かったッ……」




涙を浮かべるお父様と涙を流しているお母様、美男美女にガシッと抱きしめられホールドされる。あぁ、こんな美男美女に心配かけてしまって申し訳なく、全力で両親から離れてぺこりと頭を下げて謝る。




「ごめんなさい、お父様、お母様……私の不注意でご心配をお掛けしました……。と、扉が開かなかったのも私が無意識のうちに誰にも開かれないよう、聞かれないよう、遮断していたからなのです……」




なんて、謝ったらみんなが固まる。不思議に思っていれば、みんなが一斉に涙を滝のように流す。




「奥様……シャルネラお嬢様が……ごめんなさい。と……」


「えぇ、えぇ、聞きましたわ。シャルネラちゃんの口からごめんなさいなんて……」



「どうしたんだ、シャルネラ……もっと怒ってもいいのだぞ!!そうだ、いつもの様に【私を落とした馬車なんて使いたくない!あれを扱っていた者は処刑して!!】と言ってもいいんだぞ。あぁ、そうか……我が可愛い娘はそんなことも言いたくないほどに怒っているのだな!!よし、お父様に任せなさい。あの馬車を扱っていた御者と馬は消してこような。もちろん、二度と顔を見かけないように、ね。」



「え、いや。え?」




なにかよからぬ事をしそうなお父様に頷き、それはいい考えですわ!と、話に乗るお母様。そんな両親を戸惑って見ていた私にこっそりと耳打ちするのはラルラで、彼女も泣いているので息が耳にかかりくすぐったい……




「お嬢様……お嬢様は謝ったりなどしませんよ……」



「…………」




謝らないだと!?人間。すみません。ありがとうございます。を言わない人なんていないでしょ!?あー。自分……悪役令嬢だったわ、難しいっ!




「お父様、お母様。私、シャルネラは生まれ変わったのです。これからはそんな子供みたいなことは言いませんわ!それに、消さなくてもいいです!!むしろ、けさないであげて!!……ゴホンッ……ですからお母様、お父様……そろそろお顔がだらしな……ゴホッ……そろそろ涙をふいてくださいませ……」





いつものお父様達の優しい(美しい)お顔がみたいです。と、微笑めば、何故かまた抱きしめられたのでした。





とりあえず……壊れた扉……なおるのかしら?








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