悪役令嬢になりきれませんの。
魔法は便利だな令嬢




数分後、両腕いっぱいに書類を抱えて戻ってきたカナルさんと、執事見習いの三人。それから、何故かお父様までいらっしゃった……





「奥様、こちらがここ数年の報告書で、こちらが春の月の報告書です。」




「ありがとう。」




四季に並べられた辞書とも言える分厚い本をカナルが説明しながらも机に並べてくれた。私は去年の夏の月の報告書を手に取りペラペラとめくる……





いやいやいや。おかしいおかしい。あ、でもありえない事ないか……どうやらこの世界は季節関係なくどの植物も野菜も果物も育つらしい……だが、やはりどの植物もジリジリと肌を刺す太陽には勝てないみたいで、百のうちの六十がダメになっている……割に畑が少なすぎる……




確かこのゲーム。農業とかは、例のゲームを似せてるんだっけ?たしか、主人公が牧場GETして、動物を育てたり畑仕事したり、結婚したりするあのゲーム。





ならば物は試しで、せっかくの魔法を有効活用して畑を広げれるだけ広げ、魔法でちゃちゃっと種植えて、朝と夕方に水あげて。家畜も育てちゃおっか!いや待てよ?この領地にどれだけの人が魔力を枯らすことなく水やりできるのかって話だよね?もし居たとしても……1日2回魔法を、使えば倒れちゃうかもしれない。





んー。んー。と、唸っている私を何処か期待しためで見るお父様……私は苦笑しながらも紙とペンを貰う。そして、今からやることを書出す



・畑を広げる
・種を植える
・朝と夕方に水をやる
・土の潤いが保てる肥料を作る
・うっすらと畑の上に膜を貼る




書き足した紙を見下ろし満足気に微笑む。それを見ていたお父様が首を傾げ私に声をかけてくる。




「シャルネラ、畑を増やすと水をやる、それに、うっすらと膜をはってどうするんだい?」



「はい。お父様……報告書を見る限り。我が領地の人口と作物の出荷量が全然あってないのです。一家庭がだいたい4人とします。出荷量が3だとすれば一人食べれずひもじい思いをします。まぁ、取り敢えず、出荷量が足りず、水やりの量も足りない。太陽の当たりすぎで土が乾燥してる。ならばどうする?私はこの問題を魔法で解決しちゃいましょー!と、考えました。」





なんて、大袈裟に手振りを付けながらも説明すれば質問をしようとしたカナルが口を開く前に私は続きを話す。




「そこで、魔法を使える人がいるか、が心配になったそこの貴方!!心配することは無いのです!!なんせ、この世には……魔法石なるものがあるのですから!!!!」





そう言って机をバンッと叩く。それに驚きながらもお父様とカナルが顔を合わせ目と目で話をしている……




「でも、シャルネラちゃん?膜をはるのには何が関係あるの?」



「んー。いわゆる乾燥よけと日焼け止めです?土も作物も人の肌のようには乾燥し日焼けしちゃいます。まぁ、はろうとする膜は人間の顔パックみたいなものですよよ、お母様!」




まぁまぁ!!と、私の意味不明な説明で感動するお母様と頭を悩ますお母様と私以外の皆に戸惑いながらも、戸惑いを顔に出さず、すまし顔で紅茶を飲んでいれば何かを思いついたのか、目と目で会話をしていたカナルとお父様が何やら見習い執事に指示を出していく。




「旦那様。魔法石の手配を至急手配します。」


「うむ。ならば明日、民達には畑を増やすように言って、用意できた魔法石を配ることにしよう……」



「お嬢様が言う乾燥止めと日焼け止めの膜はどう致しましょう?」



「むー。それについては私にもわからん……これは愛娘に聞くしかあるまいよ……」



「ならば、明日。お嬢様に実物を見せてもらえるようお聞きしておきます。」





なんて、会話を聞いていたが……カナルとお父様は絶対ここ、私の部屋が書斎だと思ってるよね?娘はここにいるんだからすぐ聞けるのにね……



取り敢えず……ミルフィーユが食べたいわ。



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