社長の溺愛にとかされて
ホテルのバーは、照明が抑えられ、
スポットライトが、部屋を浮かび上がらせている。

ガラス張りで夜景の見える席は、すでに予約や宿泊客で埋まっており、
カウンター席だったが、そのカウンターも重厚な木のテーブルで、
大人の雰囲気を演出していた。

横を見れば、宝石をちらばめたような夜景で、
男性と二人と言うロマンティックなムードのはずなのに、
そんな夜景を見る余裕もなく、これから話す内容に、心は重く沈んでいた。

「何飲む？」

「アメリカン・レモネードを」

アメリカン・レモネードは赤ワインとレモンジュース、砂糖などを入れた
カクテルで、下は白、上は赤のコントラストが美しい。

「慎也は？」

「俺はキールで」

キールは白ワインとカシスリキュールを合わせたカクテル。

「２人ともワインベースだね」

「そうだな」

しばらくして、そっと置かれたお酒を、乾杯と言って、
グラスを合わせ、２人とも前を向いて飲む。
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