社長の溺愛にとかされて
「ごめん、遅くなった」

取引関係の人を出口まで見送った慎也が、私の元に来て、
申し訳なさそうな顔で言う。

「遅くって、まだ5時13分ですよ」

「俺とした事が、時間オーバーするなんて・・・」

確かに慎也は時間通りスケジュールをこなすタイプ。
しかし、相手がある場合、相手の都合もあるだろうし、
私は全然気にしていない。

「じゃ、今日はリッチにお願いしますね」

冗談めかして言うと、

「任せといて」

そう張り切って、慎也は自分のディスクに向かって行った。

居酒屋で焼き鳥つまみながら、話しをするつもりでいたのに、
ひょっとしてと、胸を膨らませる。

夏用の軽いジャケットを羽織った慎也がやってきて、

「じゃ、行こうか」

と歩き始めた。
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