社長の溺愛にとかされて
「スポーツカーが好きなの?」

「そうだな、SKYACTIV-G 1.5で、アクセルレスポンスとコントロール性
 が抜群なんだ、コーナリングとか最高だな、ターンアウトの加速感とか
 すっごく気持ち良くって・・・・って分かる?」

「うん、凄いって事だけは分かった、車好きなんだね」

「好きだよ」

その言葉に、少しむっとしてしまう。
最近私の事、好きって言ってくれてたのも、そんな軽い感じなの?
車と一緒?

彼女でもないのに、不貞腐れている自分自身に呆れる。

そんな私の心の声を読んだのか、慎也がぽんと私の頭に左手を置いて、
「一番は玲緒奈だよ」と言ってくれた。

その手の感覚に、心がほあっと温かくなる。
意識している自分を感じながら、嬉しくてうつむいてしまった。

慎也が運転しだして、その後は少し拷問だった。

カーブがくるたび、ひやっとする感覚が襲う。
(全然減速している感じがしない・・・)

さっきのほわっとはどこかに吹っ飛び、ドキドキが私を襲う。
胸に手を当ててる私に気づいたのか、慎也が聞いてくる。

「どうした?」

言うか、言うまいか迷って、ドキドキに勝てず口に出してしまう。

「カーブ・・ちょっと・・・・かなり?怖い・・・」

その言葉に、はっとした顔をして、「ごめん」と言って、
スピードを落としてくれる。

「これぐらい?」

「うん、これなら大丈夫」

私のペースに迷わず合わせてくれる慎也に、頼もしさを思えながら、
目的地へ向かった。
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