ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
生徒達の笑い声が教室内に響き渡る。
生徒達だけでなく、入江先生も苦笑いだけど笑ってる。
“まったく高校時代から高島は変わらないな” と言わんばかりの顔で。
『・・・・・・・・・・』
あたしの出席を確認してくれた入江先生は
きっと無言で出席を許可してくれたんだと思う
あたし自身は数学教師として
尊敬する先輩教師の授業の進め方などを吸収しておこう、盗もうという想いでこんなことをしでかしたのに
なんか入江先生の生徒だった頃に戻ったみたいで
懐かしいし、嬉しい
入江先生が創り出すこの授業という名の空間は
あたしが数学教師を目指す原点だったから
「欠席は宮沢だけだな。よし、始めるぞ。」
授業を始める直前のこの呼びかけ方も
キャッキャと友人達と騒いでいたあの頃と同じ
その頃から随分長い時間が流れている今のこの瞬間。
あたしは
先輩教師の授業を見学する数学教師ではなく、
入江先生という数学教師が織り成す数学の授業にのめり込む
ただの生徒に戻った。
あたしは時折チラ見してくる生徒達の視線に惑わされることなく
入江先生のきれいな板書、わかりやすさ満載の問題の解き方、そして途中で挟まれる生徒達との何気ない会話を
自分の目や耳を通じて余すことなく頭にそして心に刻み込んだ。
多分、この先、入江先生の生徒に戻って
この授業を受けることなんてできないから。
「それじゃ、これで今日の授業を終わる。お疲れさま。」
授業の終わりを告げるいつものこの言葉も。
入江先生が授けてくれるもの全部が
・・・・・ずっとずっとそれがあたしの中に残るように。
そして授業後の職員室。
「高島。」
教室で生徒達にからかわれていたあたしよりも先に戻っていたらしい入江先生にまた声をかけられた。
『は、、、ハイィ・・・』