ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方



そして1時間目が終わり、数学の教科書を抱えた入江先生が
職員室に戻ってきた。

まだ手が届くところに入江先生はいないのに
つい目が行ってしまう。
彼の左腕に巻かれている腕時計に。

そのまま目が離せなかった。
入江先生が自身のデスクにやってくるまで。


「高島?」


あたしが声をかける前に入江先生があたしを呼んでくれた。
無理もない。
あたしが腕時計から目を離せていなかったから。


『あっ、入江先生。コレ、ありがとうございました。』

「どういたしまして。」


ようやく彼の腕時計から視線を外し、ういろうを手に取りお礼を言ったあたし。
入江先生はさらりとそう返事をしてから腕時計を外し、デスクの上に置いた。
外された腕時計にまた目が行ってしまうあたし。

「高島?」

ついさっきの素性の知らない、真里さんという女性とのやりとりが頭の中でぐるぐる廻ってしまって。
もう一度彼に心配そうに名前を呼ばれたあたしは
とうとう曝け出してしまった。


『腕時計、外さないで下さい。』

「・・・?」

『忘れてくるぐらいなら、外さないで。』

入江先生から
自分以外の人にスキというベクトルを向けろと言われ
それでも
嫉妬する自分をやめられていないことを。


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