ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
∫10:風の吹く方向


【∫10:風の吹く方向 】



4月。
新年度。
新学期。

あたしは2年3組の担任となった。
担任を受け持つのは初めて。

不安だらけのスタート。

2年生の学年主任になった入江先生には
「1つ1つ落ち着いてじっくり取り組めばいい。」
と励ましてもらえた。

入江先生も学年主任は初めて。
しかも、入江先生は数学科のリーダーも兼任することになった。

あたしも入江先生も
新しい業務、新しい立場に追われていたせいか
お互いプライベートでの話題は全くしなかった。
時間薬というキーワードも。

そんなあたしたちが所属する数学科に新しいメンバーが増えた。
教師1年目の八嶋クン。

今まで数学科であたしが一番若かったから
そういう点でも自分が1段ステップアップした感じがする。


「高島先生。小テスト、作ってみましたけど、見てもらえます?」

こうやって相談されたりするとそれを実感する。


『大丈夫だと思うけど・・・一応、入江先生にも見てもらって。』

「あ~」


なぜか声のトーンが落ちる八嶋クン。


『どうかした?』

「いえ・・・入江先生とか声、かけにくいなって。」

『入江先生は口数少なくて、声かけにくいかもしれないけれど、話はちゃんと聴いてくれるはずだから。指導法とかも参考になるしね。』

「じゃあ、行ってみますか。」

『頑張れ!』

「行ってきます!」


そう言った直後、斜め前の席に人影を感じた。
それは入江先生。

昨年度までは隣の席だった入江先生だったけれど
学年主任になったこともあり、2年生の担任達のデスクを見渡せるような場所に移動した。

入江先生はその席に座り、早速、書類を片付け始めた。


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