ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方


スキだと言ってくれた高島を俺は
自分から突き放すようなことをした

だから
八嶋が口にしたようなことはあり得ない


「僕の勘違いなら・・いいですよね?」

『何がだ?』

「過去とはいえ、教師が生徒を好きになったっていう勘違い。真面目な入江先生がそんなこと、あるはずないって僕、信じてます。」


教師が生徒を好きになる
その概念は一般的には不適切だと言われている

俺だってそう思っていたし
どこか他人事ぐらいにしか思っていなかった

でも、蒼井が俺の前に現れてから
その概念を俺の中でどう考えればいいのか
わからなくなった

わからない状況下で苦し紛れに導いた答

それは
蒼井のことを “気になる生徒”
と思うことだった

そんな俺は
生徒だった高島には
どんな風に見えていたのだろう?

こんな風に
高島の目線が気になるなんて
今まではなかった

それだけじゃなくて

高島のことを気にする
自分以外の人間の目線を
気にすることも・・・


「だから、いいですよね?高島先生のこと。入江先生に遠慮しなくても。」

『どういうこと?』


高島は
蒼井がいなくなった時も
彼女が教師になってからもずっと

そして

彼女が俺にスキだと気持ちを打ち明けてくれたのに
その想いに自分が応えてやれなかった
その後も高島はずっと
後輩教師として、同僚として
俺のすぐ近くにいてくれた


その状況は俺の中で当たり前になっていた

高島がいて
自分がいて
それが
ごく自然なことだった


「僕、高島先生のことスキになりました。」


でも、彼女に対する不誠実な状況は
いつか終わりがくる


「数学教師の先輩としてだけでなく、一人の女性としても。」


そんなことを思い知らされる
誠実そうな男が現れた

それが現実で

「明朗活発、面倒見がいい姉御肌・・・でも、ドジなところを見せられると守ってあげたくなるんですよね。」


それが

「だから、温かく見守っていて下さい。上司として。後輩教師同士が特別な関係になっても。」

もしかしたら、今、なのかもしれない



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