ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方


本当に大切なものを失いたくなくて。

もし、まだ高島が俺のことをスキだと想っていてくれるなら
それを忘れようとする時間薬の存在なんて信じなくてもいい
逆に
高島に想いを寄せる八嶋と新しい恋が始まるのなら
時間薬なんてものは
もういらないのではないか?



『・・・・時間薬』

「えっ?」

『そんなものは実際のところ・・・・ないのかもしれないな。』


俺が高島に発したその言葉。

それは
彼女の想いに背き、彼女に自分からスキと伝える権利のない俺が
“彼女の中にまだあるかもしれない俺に対するスキを自然消滅させて欲しくない”
という自分の本当の想いを伝えたいという精一杯な悪あがき

そして彼女が新しい恋に一歩進むように背中を押そうとする自分なりのケジメ

それらが入り混じった複雑なもの。

その状況から抜け出したい俺が
高島に依存している証拠でもあるんだろう。



「入江先生!!!!!」


『・・・・ん?』


「入江先生が言う時間薬ってどんなものなんですか?」



そうやって俺に聞いてくる高島は見抜いているんだろうか?
俺が相反する想いを共に抱いていることを・・・

だから、時間薬の意味を

『・・・宿題。』

自分で決め切ることなんかできない俺は
そう言い残し、ひとりでタクシーを拾うために大通りのほうへ歩き始めた。


なかなか捕まらないタクシー。
溜息をつきながら空を見上げた。

居酒屋のネオン街の眩しい照明のせいなのか、星の輝きがぼんやりと見えたその夜。
この後、高島が八嶋とどうなったか・・・なんて知りたいとは思わなかった。
自分が出した宿題の答がはっきりしてしまいそうだと思ったから。




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