ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方



だから、子供みたいな真似して先手を打った。
歓迎会が終わった後、高島を家まで送ると申し出るようなことを。

八嶋の前で、プライベートのことまで干渉しないみたいなことを言っておいて
思いっきり高島の “放課後” をそれとなく握ろうとしている俺。

一緒に楽しそうに飲んでいた八嶋と高島が
明日は土曜日で仕事が休みであるこの後、どうなってしまうのか
気になったからだ。


しかし、そんな俺の腹の中は知らない高島は

「せっかくですが、まだ電車ありますから」


俺とは裏腹だった。
それだけに留まらず、彼女は自分が送ると申し出た八嶋の誘いに乗ってしまった。

どうにかして高島を連れて帰りたいと思う俺と
以前、彼女と自分は関係ないと言い放った俺

今の俺は前者
でも、そんな真似なんてできない


『そっか・・・じゃ、頼むな、八嶋。』


俺は彼女達の上司という立場のまま踏み留まることを
自ら望んだのだから・・・


でも、帰ろうとする彼らの様子を目の当たりにしたら

“入江先生、本当に大切なものは当たり前のようにすぐ近くにあるものなのでは・・・”
と再会した際にそう言ってくれた蒼井の言葉が頭を過ぎった。

当たり前のようにすぐ近くにあるもの・・か・・・

それはきっと
今の俺にとっては高島なんだと
今頃になって気がついた

それなのに今、
俺はそれを自分から手放そうとしている

高島にはいろいろな可能性があるはずだから
教師として
そして
ひとりの女性として

でも
本当にそれでいいのか自問自答した俺は

『・・・高島。』

彼女を呼び止めずにはいられなかった。


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