お助け部ッ☆



ズコーッ




静かなロビーに俺のオレンジジュースをすする音だけが響く。




「恭ちゃん…、行儀悪いよぉ?」




莉央さんの苦笑いも無視出来るくらい、今の俺は最上級に機嫌が悪かった。




午後2時。



コンテストも無事終わり、女装もとけて、晴れて自由に──…なる予定だったんだ、俺は。



コンテストは終わったのに、いまだに女装中の俺。




「恭ちゃん、気持ちはわかるけど……我慢我慢っ!」




励ましてくれてる莉央さん。でもそう簡単には開き直れない。




「結構我慢しましたけど」

「…だよねぇ?と、とりあえず!翔たんが来るまでは!ね?」

「………。」




それを言われちゃ何も言えなくなる。



兄貴は今、囲み取材中。


なんのって?


【初出場で初優勝の素人モデル、翔子ちゃんに迫る!】


だって。




……有言実行、ってーの?


兄貴、欲には忠実だから。


フツーに獲っちゃったんだよね、てっぺん。




「もうヒーローインタビュー状態だよ」




あれ、ヒロインインタビュー?とか言い直す莉央さんだけど、兄貴は実際男だし、ヒーローインタビューでいいんじゃない?みたいなどうでもいいことを考えてみる。




「っつか俺ら関係ないんだから、着替えたって問題ないと思うんですけど」

「う〜ん…でも、依頼だからねぇ?」




曖昧に笑う莉央さん。




「依頼って…コンテスト出場だけじゃないんですか」

「初めはそうだったんだけど、とりあえず…混乱を防ぐために最後まで」

「………。」

「恭ちゃん、無言の抵抗はやめてほしいかな」

「嫌です」

「いや有言でも決定事項だから…ね?」




可愛く小首を傾げる姿は女の子そのもので。




「……わかりました」




なんか抵抗しきれなかった。




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